
自民党議員の8割が参加を決めた「国力研究会」
あえて全員に声をかけたこの仕掛け、ただの勉強会で終わるはずがない。
麻生太郎副総裁や茂木敏充外相、小泉進次郎防衛相らが発起人に名を連ね、高市早苗首相の衆院選公約を後押しする目的で立ち上がったこの議連。
事務局を務める山田宏参院議員は、5月19日の産経ニュースライブで入会届が320人を超えたと明かした。
自民党の国会議員は衆参あわせて417人。
じつに76%が参加したことになる。
会費はたったの月300円。
缶コーヒー2本ぶんで「高市首相ににらまれずに済むなら、喜んで払いますよ」
そんな議員のホンネを政治ジャーナリストの青山和弘氏があっさりと紹介していた。
石井準一参院幹事長のグループに所属する西田昌司参院議員ですら、「入らないと、またいらないことを言われますからね」と参加を即決。
なんともあけすけな態度。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみたい。
この議連、「参加案内」は自民党の全議員に配布されている。
全員に、だ。
つまり石破茂前首相にも、岩屋毅前外相にも、そして党内きってのリベラル派である村上誠一郎前総務相にも届いている。
わたしはここに、なかなか周到な設計を感じる。
「声をかけること」自体が戦略だった
案の定、石破氏は不参加を表明した。
「案内状の書面も全然見ていない」「関与する気もない」と記者にコメント。
岩屋氏は「総裁を支える会をわざわざ作るなんて、違和感を覚えます」とメールで素っ気なく回答。
森山裕前幹事長も「高市首相をみんなで支える考えは一致する」としながら参加は見送った。
そして村上氏。
この人はやはり期待を裏切らない。
「なんであんな、大政翼賛会みたいな会をやる必要があるのか。全くナンセンスだよね」と一刀両断。
「なんで俺が入らなきゃいけないの」と清々しいほどのバッサリぶり。
マスコミは当然これを報じる。
テレビも新聞も「反高市の声」としてこぞって取り上げた。
けれどよく考えてほしい。
全員に声をかけなければこうはならなかったはず。
声をかけたからこそ、断った人の名前がくっきり浮き上がる。
「この人は不参加だった」と可視化される。
しかも断り方まで報道される。
村上氏が「大政翼賛会」という強い言葉を使えば使うほど多くの有権者は逆にこう感じるかもしれない。
「またこの人は大げさなことを言っている」と。
安倍晋三元首相を「国賊」呼ばわりして党役職停止処分を受けた過去、衆院選の読売アンケートで自党の総裁に好感度2をつけて野田佳彦氏に5をつけたこと。
こうしたエピソードがセットで想起されてしまう。
反対する側の「顔ぶれ」と「言いっぷり」が報じられること自体が国力研究会の存在意義を際立たせてしまう構図。
全員に案内を配った側はそこまで見越していたのではないかとわたしは思う。
「先祖返り」か それとも党内統治の新しいかたち
もちろん、国力研究会を手放しで称賛できるわけではない。
東洋経済オンラインで安積明子氏が指摘していたように、「結局は麻生さんがポスト高市の決定権を握るための議連だ」という冷ややかな見方もある。
派閥解消が宣言されてからまだ2年余り。
それなのに武田良太氏の「総合安全保障研究会」が20人超で発足し石井準一参院幹事長は40人超の「自民党参議院クラブ」を結成。
グループ政治は復活しつつある。
田中角栄の「政治は数、数は力」をまざまざと見せつけるような光景が広がっている。
菅義偉元首相が引退後も影響力を残し5月12日には側近の会合「ガネーシャの会」に顔を出した。
そこに小泉防衛相が飛び入り参加し、来年の総裁選への野心をのぞかせているとも伝えられている。
一方で、その会合には高市首相の側近・黄川田仁志沖縄・北方対策担当相の姿も。
どこまでが味方でどこからが敵かわかりにくい。
これが自民党の自民党たるゆえんだとも言えるけれど、わたしたち国民の生活に直結する政策がその渦中で後回しにならないか。
そこが一番気がかり。
ただ、ひとつはっきり言えることがある。
320人が集まった事実は軽くない。
高市首相は2月の衆院選で歴史的大勝をおさめ国民からの支持という裏づけを持っている。
党内基盤が脆弱と言われ続けてきたけれど、その弱点を「全員参加型の議連」というかたちで補おうとしている。
初会合ではジョージ・グラス駐日米大使が「日米黄金時代のビジョン」と題して講演を行う予定。
安全保障や経済政策を語る場としての実質を伴わせようという意志も見える。
それでも気になるのは、オールドメディアの伝え方だ。
村上氏の「大政翼賛会」発言を見出しに据え、あたかも党内の深刻な分裂であるかのように報じるテレビの姿勢。
320人が参加したという圧倒的な事実よりも、数人の反発に焦点を当てる。
伝え方ひとつで、まるで印象が変わってしまう。
わたしたちにできるのはひとつのニュースを複数の角度から読むこと。
誰が何を言ったかだけでなく、なぜそう言ったのかそしてそれを誰がどう切り取ったのか。
そこまで見ないと政治の本当の輪郭はつかめない。
国力研究会がただの「踏み絵」で終わるのか、政策を動かすエンジンになるのか。
答えはこれから出る。
わたしはフラットな目で、その行方を見届けたいと思っている。



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