
大臣がSNSで「誤報です」と声を上げなければならない国、それが2026年のいまの日本。
4月28日、毎日新聞が「農水省、放出した備蓄米15万トンを買い戻しへ」という記事を配信した。
令和の米騒動を受けて2025年に緊急放出された政府備蓄米59万トンのうち、26年度中に最大15万トン分を買い戻す方針だと報じたこの記事。
Yahoo!ニュースにも転載され、瞬く間に拡散した。
ところがである。
記事が出たその日の夜、鈴木憲和農林水産大臣が自身のXアカウントでこう投稿した。
「これは誤報ですね。そのような方針を決定した事実はありません」
たった2行。
しかし、このポストは523万件以上の表示を記録し5万件を超える「いいね」が集まった。
現役の閣僚が大手メディアの報道をリアルタイムで否定する。
ちょっと前なら考えられなかった光景がもう日常になりつつある。
「取材したから正しい」が通用しない時代
わたしは特定の政党を応援しているわけではない。
だからこそ純粋にこわいと思った。
もしも鈴木大臣がXで発信していなかったらどうなっていただろう?
「政府が備蓄米を買い戻す」という情報が独り歩きしてコメの流通や価格に影響を与えていた可能性だってある。
食卓に直結する話題だけに、ぞっとする。
さらに呆れたのは同じ4月28日に共同通信が自社の懲戒処分を発表したこと。
2024年に和歌山県串本町で起きたダイビング中の死傷事故をめぐり、まったく無関係のダイビングショップ「マリンステージ串本店」の実名を記事に記載して配信していた問題で和歌山支局長やニュースセンター長ら5人を戒告処分にしたという。
沢井俊光社長も報酬の一部を自主返納したらしい。
この誤報の経緯がまたひどい。
共同通信は店名を取り違えた状態で当該店舗に電話取材をかけその電話でのやりとりが誤認をさらに強化してしまったとみられている。
つまり「裏取り」をしたつもりが逆に間違いを確信してしまったわけだ。
無関係のお店は事故とは何の関係もないのに実名を報じられた。
Google検索でショップ名を入れると「書類送検」がサジェストされる状態にまでなったという。
個人商店にとってこれは死活問題。
「謝ってすむ問題ではないので、弁護士さんと相談しています」と店舗側はコメントしていてその怒りは当然だと思う。
壊れていくのは信頼 そして取り戻せないのも信頼
★壊れていくのは信頼 そして取り戻せないのも信頼
ふたつの出来事が同じ日に起きたことにわたしはある種の象徴を感じている。
毎日新聞の件では現役閣僚がファクトチェッカーの役割を担った。
共同通信の件では報道機関が身内の不祥事をひっそりと処分した。
どちらも根っこは同じ 「報道の正確性」 という最低限の土台がぐらついている。
テレビや新聞がSNSを 「デマの温床」 と批判する場面をよく見かける。
でも、いまや閣僚がSNSで誤報を正し国民がそれをリアルタイムで確認できる世の中。
デマを流しているのはいったいどちらなのか。
もちろん、すべての報道が間違っているとは思わない。
現場で汗を流す記者のなかには信念を持って取材している人もたくさんいるだろう。
けれど、組織としてのチェック機能が壊れているなら個人の誠実さだけでは支えきれない。
身内に甘く他者には厳しい。
政治家のスキャンダルには猛烈に食いつくのに、自分たちの誤報には小さな訂正記事ひとつで済ませようとする。
その姿勢が透けて見えるからこそ国民は 「オールドメディア」 と呼ぶようになった。
わたしたちにできることは、ひとつの情報源だけを信じないこと。
テレビが言っているから正しい、新聞に載っているから間違いないそんな時代はとっくに終わっている。
大臣のXポストと新聞記事を見比べて自分の頭で考える。
めんどうだけれどそれがいまを生きるわたしたちの自衛手段。
報道機関に求めたいのは正確さへの執念だ。
間違えたなら堂々と認めなぜ起きたのかを検証し、二度と繰り返さない仕組みをつくる。
それができないなら信頼を失うのは当たり前。
情報は武器にもなるし凶器にもなる。
その重みを忘れたメディアに
わたしたちの暮らしを語る資格があるのだろうか。



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