
たった1人の仲間を救うために
数十機の航空機が敵地イランの空を埋め尽くした。
4月5日未明、トランプ大統領が自身のSNS「Truth Social」に投稿した
一言がこれだった。
「WE GOT HIM!(奴を取り戻した!)」
36時間の死闘――敵地深くで繰り広げられた救出劇
ことの発端は4月3日にさかのぼる。イラン上空で作戦行動中だった。
米空軍のF-15Eストライクイーグルがイランの防空システムによって撃墜された。
2月28日に始まった米国・イスラエルによるイラン攻撃以降、米軍機の撃墜が確認されたのは初めて。
衝撃的なニュースだった。
F-15Eには通常、パイロットと兵装システム士官(WSO)の2人が搭乗する。
被弾直後、2人は射出座席で脱出。
パイロットは金曜のうちに救出されたけれどWSOの大佐は行方がわからなくなっていた。
この大佐がすごかった。
SERE訓練――生存・回避・耐久・脱出の専門訓練を叩き込まれた軍人として、墜落した残骸からひとりで離脱。
イラン北西部の険しい山岳地帯を歩き、高台の尾根に身を隠して緊急ビーコンを発信し続けたという。
一方、イラン革命防衛隊(IRGC)と民兵組織バシジも血まなこで捜索していた。
地元の州知事が「乗員を確保または殺害した者には特別な称賛を与える」と宣言するほどの執念だった。
米軍はこの48時間、大佐の救出を最優先任務に据えた。
数百人規模の兵員、数十機の軍用機、ヘリコプター、あらゆる情報ネットワーク。投入された戦力は膨大だったとニューヨーク・タイムズが伝えている。
米特殊作戦部隊は金曜と土曜の両日イラン領内の地上に展開。
接近するイラン軍を阻止するために米空軍の戦闘機がイラン軍への攻撃を実施し、地上では実際に銃撃戦が発生した。
フォックスニュースの報道によれば、救出ヘリ2機がイラン軍の砲火を浴び、乗員が負傷しながらもイランからの脱出に成功。
援護任務についていたA-10攻撃機も被弾しパイロットはペルシャ湾上で射出脱出のちに救助されている。
さらに驚くべきことに、救出完了後、輸送機2機がイラン国内の遠隔飛行場で立ち往生してしまったという。
代替の3機が急きょ派遣され救出チームを回収。残された2機は敵の手に渡らないよう爆破された。
まるで映画のような展開が、現実に起きていた。
トランプ大統領は投稿のなかで
「敵地深くで2人のパイロットを別々に救出したのは、軍の記憶にある限り初めてだ」と述べこう締めくくった。
「アメリカの戦士を決して見捨てない」
米軍人の犠牲者はゼロ。
1人の仲間のために国家が総力を挙げる。この凄まじい覚悟に、胸が熱くならない人はいないと思う。
わたしたちの暮らしと無関係ではいられない中東の激震
ただ、感動だけで終わらせてはいけない。
この一件が示しているのは、中東情勢がいよいよ次の段階に入ったという厳しい現実でもある。
米軍がイラン領内で地上戦闘を行ったことが確認されたのは今回が初めてだと報じられている。
これは軍事衝突の質が変わったことを意味する。
原油市場はすでに大きく反応してきた。
2月末の開戦前、WTI原油先物は67ドル近辺だったのに3月上旬には一時119ドル台を記録。
100ドル超えの水準が続いている。
日本のガソリン価格や電気代、食料品の値段にダイレクトに響いてくる話。
ホルムズ海峡の緊張が続けば日本が輸入する原油の大部分がリスクにさらされることになる。
わたしたちの台所は、この遠い戦場と確実につながっている。
それなのに、日本のテレビ報道を見ているとこのニュースの扱いがあまりに薄くて正直おどろいてしまう。
世界中のメディアが速報で伝えているのになぜ十分に報じないのか。
エネルギー安全保障は日本にとって最も切実なテーマのひとつ。
原油の中東依存度が高いこの国で、米軍とイランが直接交戦しているという事実をきちんと国民に届けないでどうするのだろう。
高市総理には中東情勢の急変に備えた。
エネルギー調達の多角化や備蓄戦略の強化をスピード感をもって進めてほしい。
いまこの瞬間も、状況は動き続けている。
わたしは特定の政党を応援しているわけではない。
だからこそフラットに言える。世界で何が起きているのかを知ることそれがわたしたち一人ひとりの生活を守る最初の一歩になる。
1人の兵士を見捨てなかった米軍の姿勢。そこに宿る「仲間を守り抜く」という意志は国のかたちそのものを映し出している。
日本もまた自国の国民と暮らしを守り抜く覚悟を改めて問われているのだと思う。
目を離してはいけない、この中東の今から。





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